離心所

離とは悪い行為から離れるという意味です。

この心所は、悪い行為をしそうな状態になったときに『ああ、いかん、いかん』と立て直すはたらきがあります。

例えば、今あなたは勉強のために、この記事を読んでいますね。

おそらく今ウソをつこうとか、だれかに暴言を吐こうとか思っていないと思います。だから、あなたが今ウソをついてなくても、暴言を吐いてなくても離心所は生まれません。

離心所は、口と体の行為に対応しています。例えば、悪口であれば口の行為、盗みであれば体の行為というふうにです。

離心所には3つあります。

正語(しょうご)

正語とは、仕事に関係のないときに、妄語、両舌、悪口、綺語の4つの口による悪行為を避ける性質の心所です。

4つの口による悪行為とは次のとおりです。

妄語(もうご)

ウソのことです。

両舌(りょうぜつ)

二枚舌の事ですね。AさんとBさんにそれぞれ違う事を言ったりすることです。

悪口(あっく)

『わるぐち』という意味ではなく、乱暴な言葉という意味ですね。

綺語

綺は綺麗ですが、飾りだけで中身がない言葉という意味です。つまり目的がないムダ話の事をさします。

正業(しょうごう)

正業とは、仕事に関係のないときに、殺生、偸盗、邪淫の3つの体による悪行為を避ける性質の心所です。

3つの体による悪行為とは次のとおりです。

殺生(せっしょう)

生き物を殺すこと。例えどんなに小さな虫でも殺せば殺生です。

偸盗(ちゅうとう)

盗む事ですね。

邪淫(じゃいん)

邪(よこしま)な行為です。一般的には不倫と解釈されます。

正命(しょうみょう)

正命とは、正しい仕事という意味があります。もっと具体的に言うと仕事において、
  • 妄語、両舌、悪口、綺語の4つの口による悪行為
  • 殺生、偸盗、邪淫の3つの体による悪行為
を避ける性質の心所です。この7つを離れた仕事が正しい仕事とされています。

また仏教ではとくに禁止している職業を定めています。
  • 毒をつくること、その売買
  • 武器をつくること、その売買
  • 人を酔わせるもの(麻薬・酒)をつくること、その売買
  • 生き物の売買
いずれも生命の苦しみをつくる事につながるものです。

まとめ

離心所は、
  • 正語
  • 正業
  • 正命
の3つでした。

これらの特徴は、バラバラに生まれる事です。

例えば、あなたがふわっとウソをつきたい気持ちになったとします。そのときに、『ダメだ』と思いとどまったときに、正語が生まれますね。

でも、このときは体の悪行為をしていないわけですから、正業が生まれる事はありません。

他には、例えば、あなたが虫を殺したくなったとします。それを思いとどまれば、正業が生まれます。

でも、このときは口による悪行為をしていませんから、正語が生まれる事はありません。

色界や無色界はとてもレベルが高く、そもそも悪行為をするエネルギーすら生まれないので、離心所は生まれる事はありません。

ただ例外的に、出世間心には離心所がすべて同時に含まれます。