三相
止の瞑想の対象は、次にあげる三相に分類することができます。遍作相
最初に止の瞑想をするときに所縁となるものが遍作相と呼ばれます。つまり遍作修習において最初に所縁となるものが遍作相です。例えば地遍を修習する場合、まず目の細かいきれいな土で直径30cmくらいの円(地遍)をつくります。
その地遍から120cmくらい離れて座って、地遍を凝視しながら「地」「地」と念じます。その時に、時には地遍を凝視し、時には眼を閉じて心の中で思い浮かべます。
このときの所縁が遍作相であり、このときの修習が遍作修習です。
取相
さらに遍作相を修習すると、眼を閉じても、まるで眼を開けているときのように地遍が所縁としてはっきりと心に表れて来るようになります。このときの所縁が取相です。また、このときの修習も遍作修習なのですが、遍作相を所縁としているときよりもより修習の度合いが深まっています。
似相
さらに取相を修習すると、取相と形も大きさも等しく、取相よりもより清らかな所縁が心に現れてきます。遍作相、取相はもともと土でつくられた地遍によってできた、いわば色(物質)に依存した所縁でした。
しかし、似相になると完全に色から切り離された、修習の力によってできた施設になります。そして、似相を所縁としたときの修習が近行修習です。
さらに、似相を所縁として近行修習を続けると、色界初禅が安止した安止修習という状態に達します。
色界禅の生起
止の瞑想をするにあたって、所縁は- 遍作相
- 取相
- 似相
- 地遍 - 遍作相 - 遍作修習
- 地遍 - 取相 - 遍作修習
- 地遍 - 似相 - 近行修習
- 地遍 - 似相 - 安止修習(色界初禅)
色界初禅において五自在を得て、第二禅を目指すとき、初禅の時に所縁とした似相を続けて所縁として修習します。例えば、地遍の場合は次にようになります。
- 地遍 - 似相 - 遍作修習
- 地遍 - 似相 - 近行修習
- 地遍 - 似相 - 安止修習(色界第二禅)
- 十遍10
- 十不浄10
- 身起念1
- 出入息念1
五自在
色界初禅から色界第二禅に、色界第二禅から色界第三禅にというように次のステージの禅定に達するには、まず今いるステージの禅定を自在にコントロールできなければなりません。このとき5つの自在が必要であると言われます。その5つとは以下の通りです。
引転自在
出定した後、すぐに五禅支(尋、伺、喜、楽、一境性)に心を引転できること。入定自在
禅定に入りたいときは、自分の思いのまますぐに禅定に入れること。在定自在
自分が望む時間をずっと禅定に入っていられること。出定自在
自分が予め予定していた時間の通りに禅定から出られること。観察自在
五禅支を自在に観察できること。引転自在を得たならば自動的に観察路が生じるので観察自在も得られます。無色界禅の生起
十遍のうち虚空遍を除いた九遍に対し、それが無い状態(空施設)を念じます。これが、初無色界の遍作修習です。さらに修習を続けると、色界第五禅に対する欲求がなくなって近行修習に達します。
その後さらに修習を続けると、初無色界である空無辺処定(安止修習)に達します。
- 空施設 - 遍作修習
- 空施設 - 近行修習
- 空施設 - 安止修習(空無辺処)
さらに、初無色界識(初無色界善心)が無であることに対して「何もない」と念じることで、第三無色界識である無所有処に達します。
さらに、その第三無色界識を所縁として、「これは寂静である。」と念じることで、第四無色界識である非想非非想処に達します。
神通の生起
色界第五禅に達して、定力が強くなって明瞭になると、色界第五禅心に相応している慧が神通を得られる状態に達します。過去世で神通を得るにふさわしい徳を積んだ人に関しては、阿羅漢道に達したり第五禅に入るだけで神通を得られることもあります。
しかし、それ以外の人に関しては、まず色界禅、無色界禅の計9つの禅定を全てマスターする必要があります。
そして、
- 色界初禅 → 入定 → 出定
- 色界第二禅 → 入定 → 出定
- ・・・
- 無色界第四禅 → 入定 → 出定
- 無色界第三禅 → 入定 → 出定
- ・・・
まとめますと、
- 神通は色界第五禅心のある特殊な状態である。
- 色界第五禅に入ったからといって神通に入れるわけではない。
- 多くの場合、神通に入るには色界、無色界の計9禅において、五自在を得る必要がある。