名が名色に対しての縁

名とは心と心所のこと、色とは物質のことですね。つまり、名が名色に対しての縁とは心や心所が、別の心や心所や色を生じさせる縁のことです。名が名色に対しての縁は次の5種類あります。
  • 因縁
  • 禅縁
  • 道縁
  • 業縁
  • 異熟縁

因縁

因とは、次の六因をさします。
  • 無貪
  • 無瞋
  • 無痴
つまり、因縁とはこれら六因のことです。そして、因縁によって生じる因縁所生は、
  • 全ての心89から無因心を引いた心71
  • それらの心に相応する52心所(痴根心2に含まれる痴心所は除く)
  • 有因心生色
  • 有因結生業生色

なぜ痴根心2に含まれる痴心所は除くのか

もし貪根心8に相応する痴心所が因縁としてはたらく場合、貪心所は因縁所生に含まれます。貪心所が因縁としてはたらく場合、痴心所は因縁所生に含まれます。

しかし、もし痴根心2に相応する痴心所が因縁としてはたらく場合、痴心所は因縁所生にはなりえません。

なぜなら有因心の中で痴根心だけが一因心であり、唯一の因である痴心所が因縁としてはたらくと、因縁所生になりえる因がもうなくなるからです。

有因心生色とは

有因心生色とは二因または三因の心によって生じる色という意味です。また、無因心によって生じる心生色は無因心生色と呼ばれます。簡単に言うと、無因心生色以外が有因心生色です。

心生色の詳細はこちらをご覧ください。

有因結生業生色とは

業生色にも分類があり、
  • 結生業生色か生起業生色か
  • そして有因業生色か無因業生色か
の計4パターン考える必要があります。

結生とは人間で言うと受精直後の状態で、生起とは人間で言うと目や耳などの器官ができてくるころの状態です。また、有因と無因に関しては心生色のところと同じ解釈ですので省きます。

禅縁

禅縁とは禅定に入る縁となるものという意味で、具体的には以下の五禅支のことを意味します。
  • 尋心所
  • 伺心所
  • 喜心所
  • 楽受(受心所)
  • 一境性心所
また、これら禅縁によって生じる、禅縁所生は以下の通りです。
  • 前五識×2を除いた残りの心79
  • それらに相応する52心所
  • 心生色
  • 結生業生色

道縁

道縁とは悟りまたは離善地への道の縁となるという意味で、道縁の自性は有因心に相応する八道支+見心所になります。

つまり、有因心(二因心もしくは三因心)に相応する
  • 慧心所
  • 尋心所
  • 正語心所
  • 正業心所
  • 正命心所
  • 精進心所
  • 念心所
  • 一境性心所
  • 見心所
の9つが道縁です。有因心は無因心以外の心と考えれば、心89-無因心18=有因心71 となります。また、道縁によって生じる道縁所生は
  • 有因心71
  • それら心に相応する心所52
  • 有因心生色
  • 有因結生業生色
です。

業縁

業縁には俱生業縁と各刹那業縁の2種類あります。

俱生業縁

俱生業縁とは、全ての心89に相応する思心所です。俱生業縁所生とは、
  • 全ての心89
  • それらに相応する思心所以外の心所51
  • 心生色
  • 結生業生色
になります。つまり、俱生業縁とはともに生じる名色を統率するようなはたらきがあります。

各刹那業縁

各刹那業縁とは、過去の
  • 不善心に相応する思心所12
  • 大善心に相応する思心所8
  • 色界善心に相応する思心所5
  • 無色界善心に相応する思心所4
  • 道心に相応する思心所4
の計33心になります。また、各刹那業縁所生は、
  • 異熟心36
  • それらに相応する心所38
  • 結生業生色
  • 生起業生色
  • 無想有情の業生色
です。異熟心36とは
  • 不善異熟心7
  • 無因善異熟心8
  • 大異熟心8
  • 色界異熟心5
  • 無色界異熟心4
  • 果心4
です。各刹那業縁とは未来に異熟をもたらすはたらきがあります。

まるで、若いころに習った知識は、年を取ってからも必要に応じて引き出せるように、思心所が滅してからも各刹那業縁としてのはたらきが残るわけですね。

そして、その思心所は異熟をもたらすか、既有業になるかしてようやくその働きを終えます。

異熟縁

異熟縁となるのは、
  • 心生色・結生業生色に力を及ぼす36異熟心
  • それに相応する心所38
です。ここで36異熟心とは以下のことです。
  • 不善異熟心7
  • 無因善異熟心8
  • 大異熟心8
  • 色界異熟心5
  • 無色界異熟心4
  • 果心4
また異熟縁によって生じる異熟縁所生となるものは、
  • 異熟縁に影響を受ける36異熟心
  • それに相応する心所38
  • 2表色を除いた心生色、結生業生色(適宜)
になります。つまり、これも名を縁として名色が生じるという図式ですが、少し注意点があります。というのも、以下の異熟縁は色を生じさせないからです。
  • 前五識10
  • 無色界異熟心4
  • 無色界における果心4
ということは、これらによって心生色も生じないわけです。心生色が生じないということは、心生色のみに含まれる表色も生じないことになります。