十二縁起

縁起の仕方とは、次の12項目によって成り立っています。
  1. 無明
  2. 名色
  3. 六所
  4. 渇愛
  5. 固執
  6. 老死・愁・悲・苦・憂・悩み
これらは例えば、
  • 無明という縁によって行が生じ
  • 行という縁によって識が生じ
  • ・・・
というような関係性があります。

無明という縁から行

行とは、次生に異熟をもたらす業のことです。

その自性は
  • 不善心12
  • 大善心8
  • 色界善心5
  • 無色界善心4
の29心に相応する思心所です。

これらのうち、
  • 大善心8と色界善心5に相応する13思心所を善行
  • 不善心12に相応する12思心所を不善行
  • 無色界善心4に相応する4思心所を不動行
と言います。

行という縁から識

ここで言う識とは、結生・生起をもたらす次にあげる異熟心32です。
  • 無因不善異熟心7
  • 無因善異熟心8
  • 大異熟心8
  • 色界異熟心5
  • 無色界異熟心4

識という縁から名色

名色とは、名と色に分類できます。
  • 名とは異熟心32(識)と相応する心所のことです。
  • 色とは行によって生じる業生色のことです。
識によって名色が生じるわけですが、眼識・耳識・鼻識・舌識・身識といった五識(これらも異熟心)は名のみを生じさせ、色を生じさせることはありません。

無色界の場合は色がないので、識という縁から名のみが生じます。無想有情天は名がないので、識という縁から色のみが生じます。

名色という縁から六処

六処とは六内処のことで
  • 眼処(眼門=眼色
  • 処(耳門=耳色)
  • 処(鼻門=鼻色)
  • 処(舌門=舌色)
  • 処(身門=身色)
  • 処(意門=異熟心32)
の6つを指します。

名色の色、つまり業生色によって、眼耳鼻舌身処が生じます。
名色の名、つまり心所が縁となって、意処(有分心のはたらきをする異熟心32)が生じます。

六処という縁から触

触とは触れたと実感するはたらきです。私たちは六内処、つまり
  • 眼処(眼門=眼色
  • 処(耳門=耳色)
  • 処(鼻門=鼻色)
  • 処(舌門=舌色)
  • 処(身門=身色)
  • 処(意門=異熟心32)
に所縁が触れることでものごとを認識し始めます。触の自性は、有分心のはたらきをする異熟心32に相応する触心所のことです。この触をさらに分類すると六内処に応じて
  • 眼触(眼識に相応する触心所2)
  • 耳触(耳識に相応する触心所2)
  • 鼻触(鼻識に相応する触心所2)
  • 舌触(舌識に相応する触心所2)
  • 身触(身識に相応する触心所2)
  • 意触(異熟心22に相応する触心所)
となります。

触という縁から受

受とは苦楽を感受するはたらきをする心所です。受の自性は異熟心32に相応する受心所です。これも、触の場合と同じく、六内処に応じて
  • 眼触所生受(眼識に相応する受心所2)
  • 耳触所生受(耳識に相応する受心所2)
  • 鼻触所生受(鼻識に相応する受心所2)
  • 舌触所生受(舌識に相応する受心所2)
  • 身触所生受(身識に相応する受心所2)
  • 意触所生受(異熟心22に相応する受心所)
となります。触所生受とは、触によって生じる受という意味ですね。

受という縁から渇愛

渇愛とは、「それいいよね。」という弱い欲です。受は六処に相応して6種類あるので、それを縁とする渇愛も以下の6種類になります。
  • 色愛
  • 声愛
  • 香愛
  • 味愛
  • 触愛
  • 法愛
これらの自性は、貪根心8に相応する貪心所です。つまり、眼の感受、耳の感受などによって見たもの(色)、聞いたもの(声)に対しての欲(渇愛)が生まれるわけですね。

楽受に対して欲が生まれるのは、もちろんのこと苦受に対しても、その苦しみから逃れようとする欲が生じます。つまり、いずれにしても六処で所縁を感受したなら、渇愛が生まれるわけです。

渇愛という縁から固執

渇愛とは弱い欲だと説明しましたが、その渇愛を放っておくと強い欲に成長します。その強い欲が固執です。

固執の自性も渇愛と同じく貪根心8に相応する貪心所ですが、渇愛よりも圧倒的に強いエネルギーを持っています。

固執には大きく分けて4つあります。(四固執
  • 欲取・・・欲に固執する
  • 見取・・・見解に固執する
  • 戒禁取・・・悟りのためにならない習慣やしきたりに固執する
  • 我語取・・・「真我が存在する」という説に固執する → 有身見

固執という縁から有

有には、業有と起有の2種類があります。業有とは、以下の速行に相応する思心所29のことです。
  • 不善速行心に相応する思心所12
  • 大善速行心に相応する思心所8
  • 色界速行心に相応する思心所5
  • 無色界速行心に相応する思心所4
つまり、次生に結生異熟心をもたらす可能性のある思心所という意味ですね。

阿羅漢の心である笑起心や、出世間心なども速行のはたらきをしますが、生まれ変わりの原因になる業をつくらないので、ここでは含めません。

起有とは、業有より生じる
  • 異熟心32
  • 異熟心と相応する心所
  • 業生色
のことです。

ここで、「業有とは行と同じじゃないか?」という疑問が起きますね^^確かに、内容としてはどちらも「次生に異熟をもたらす業」なのですが、
  • 行とは過去生から現在生に異熟をもたらす業
  • 業有とは現在生から次生に異熟をもたらす業
であるという点で違いがあります。

有という縁から生

この場合の有とは業有のみを指しています。

生とは、欲界、色界、無色界における異熟心・それに相応する心所・業生色を指しています。つまり、有は行と、生は名色と対応しているわけです。

生という縁から老死・愁・悲・苦・憂・悩

老死・愁・悲・苦・憂・悩とは過去業によって異熟した名色がどんどんおいていく際に生じるものです。

以下、それぞれの意味を説明します。
  • 死・・・名色(心と身体)が死滅すること
  • 愁・・・将来を起こるかもしれない災難を心配すること
  • 悲・・・現在起こった災難に対して声をあげて泣き悲しむこと
  • 苦・・・肉体的な苦痛を感じること
  • 憂・・・精神的な苦痛を感じること
  • 悩・・・愁、非よりもさらに激しい苦痛を感じること