八道支

道支とは悟りに至るための実践方法です。八正道という呼び名が一般的ですね。

具体的には
  • 正見(自性は慧根心所)
  • 正思惟(自性は尋心所)
  • 正語(自性は正語心所)
  • 正業(自性は正業心所)
  • 正命(自性は正命心所)
  • 正精進(自性は精進心所)
  • 正念(自性は念心所)
  • 正定(自性は一境性心所)
の8つです。いずれの自性も、42善速行心に相応する心所になります。42善速行心は以下の通りです。
  • 大善心8
  • 大唯作心8
  • 色界善心5
  • 色界唯作心5
  • 無色界善心4
  • 無色界唯作心4
  • 道心4
  • 果心4
それでは、それぞれの意味を考えてみましょう。

正見

これは、分かりやすく言うと「正しい思い込み」というような意味です。

例えば、自己肯定感が低い人は「自分は特別に価値がない存在だ」という思い込みを持っています。ですが、客観的に考えてこの思い込みは正しいでしょうか?もちろん、正しくないですね!

そもそも、人の価値をはかることなんて、そうそうできることじゃないですから。そう考えると、「自分は特別に価値がない存在だ」という思い込みは間違った思い込みということになります。

正思惟

これは、「正しい考え方」という意味です。考え方は僕たちの思い込みをベースにして生まれます。

例えば、さっきの例で行くと、もし「自分は特別に価値がない存在だ」という思い込みがある場合、「自分は人につくすことで足りない価値を補おう」とかいう考えが出てくるわけです。

当然、間違った思い込みからは、間違った考え方しか生まれません。逆に言うと、正しい思い込みを持つことで、正しい考え方が生まれるようになります。

正語

これは「正しい言葉」という意味です。

僕たちは、何かしゃべる前には、必ず頭の中で考えてからしゃべるという作業をしています。もし、そうでないと、自分の意識とは関係なしに、自動的に言葉が出てくることになり、不具合が出ますよね?

だから、必ず言葉の前には考え方が先行します。

正業

これは「正しい行い」という意味です。行いとは、僕たちがする行動全てのことです。歩いたり、寝たり、本を読んだり、トレーニングしたり、ジュースを飲んだり、掃除したり・・といった行動ですね。

これも正語と同じで、考え方が先行して、僕たちの行いが決定されます。正しい考えを口から表現したものが正語で、正しい考えを行動で表現したものが正業です。

正命

これは「正しい仕事」という意味です。前の、正語・正業とセットですね。正しい仕事とは正しい考え方に基づいて行う仕事です。

そもそも、正しいとは「人(生命)を幸せに導く」という意味ですから、農業とか、学校の先生とかは正しい仕事の代表的なものですね。

逆に、殺し屋という仕事は、間違った仕事の代表と言えます。

正精進

これは「正しい努力」という意味です。

正しい思い込みによって、正しい考え方が生まれます。そして、正しい考え方によって、僕たちは正しい言葉、正しい行動、正しい仕事をするようになります。

でも、それが3日坊主だったら意味はないわけです。ですから、せっかく生まれた正しい言葉、正しい行動、正しい仕事を忍耐によって続けましょうということです。

正念

これは「正しい気づき」という意味です。

努力して正しい言葉、正しい行動、正しい仕事を続けていると、そこから正しい気づきが得られます。

私たちは世の中で起きている因果関係のほんの一部しか理解していません。だから仕事でへまをしたり、人間関係でつまづくのです。

そのこれまで見落としていた因果関係に気づいていくことが、正しい気付きになります。

例えば、仕事で言うとちょっとしたコツをつかむことで、仕事の成果がグンと上がることがありますよね?そのコツっていうのは、仕事をうまくこなす因果関係に気づいたということです。

正定

これは「正しい集中力」という意味です。

因果関係にどんどん気づいて仕事をうまくこなせるようになると、それに応じて集中力もどんどん高まっています。

仕事ができる人をイメージしてください。

その人は仕事中、「ああ今日夜ご飯何食べようかな?」とか「仕事面倒だな。どうやってサボろうかな?」とか考えているでしょうか?

おそらく、考えていないはずです。仕事の事だけに100%集中しているはずです。だからその人は成果が出るのです。