作用による四業

令生業

令生業とは、いわゆる一般的に業と呼ばれているものです。

令生業は、生命が結生時(人間で言うと受精の時)に、
  • 異熟心(十二因縁で言うと識)
  • 異熟心に相応する心所(十二因縁で言うと名)
  • 業生色(十二因縁で言うと色)
  • 業縁時節生色(十二因縁で言うと色)
などを生じさせる、過去世における善心・不善心に含まれる思心所のことです。また、生起時(人間で言うと人としての機能が備わっていく時期)に、人間の場合は
  • 五識×2
  • 領受心2
  • 彼所縁11(大異熟心8+推度心3)
などの異熟心、さらには各刹那ごとの業生色が生じます。

支持業

令生業のように自分で異熟心や業生色などの結果を出すことはせず、他の業のサポートだけをする業が支持業です。

支持業は他の業の作る異熟(異熟心や業生色など)のエネルギーが強くなるようにサポートし、さらにはそれらの異熟が長く存続できるようにサポートします。

支持業は善悪を選べませんから、それが善業でも悪業でもサポートすることになります。

具体的に支持業のはたらきは以下の3つです。
  • 善悪の令生業が異熟を生む機会を与える
  • 善悪の令生業が生む異熟の力を強化する
  • 善悪の令生業が生む異熟が長く存続するように支持する
例えば、私たちが現世で善い行いをすれば、そのときの心に含まれる善業が支持業となって、過去の善の令生業が異熟を生む機会を与えることになります。

逆に、私たちが現世で悪い行いをすれば、そのときの心に含まれる悪業が支持業となって、過去の悪の令生業が異熟を生む機会を与えることになります。

平たくいうと、善い行い(心)はさらに善いことを引き起こし、悪い行い(心)はさらに悪いことを引き起こすわけです。

支持業は令生業が異熟を生む機会を与えるだけではなく、令生業が生む異熟の力を強化する働きもあります。

妨害業

支持業とは逆に
  • 善悪の令生業が異熟を生む機会を妨害する
  • 善悪の令生業が生む異熟の力を弱くする
  • 善悪の令生業が生む異熟が持続できないように妨害する
というはたらきをもつ業が妨害業です。

例えば、瞑想などの善行為によってつくられる善業は、他の不善業が異熟しないように妨害する妨害業のはたらきをします。

逆に、親や恩師に対して不善な行いをした場合、そのときにつくられた不善業が妨害業となって、前世の善業が異熟する機会が妨げられたり失われたりします。

つまり、
  • 現在、善業をつくることにより、過去の善業のはたらきを支持し、不善業のはたらきを妨害します。
  • 現在、不善業をつくることにより、過去の不善業のはたらきを支持し、善業のはたらきを妨害します。
ということになります。

殺害業

支持業と妨害業をおさらいすると、
  • 支持業は令生業のはたらきを一時的にサポートし
  • 妨害業は令生業のはたらきを一時的に妨げる
という形になります。

殺害業はこれら2つの業とは違い、令生業のはたらきを完全に抹殺してしまうはたらきがあります。

ある令生業に殺害業がはたらいた場合、その令生業は二度と将来異熟を生むことがありません。

例えば、お釈迦様の時代アングリマーラという悪党がたくさん悪いことをしましたが、その後改心して悟りました。

このとき悟る段階でつくった善業が殺害業となり、過去の不善業のはたらきを抹殺したため、それらの不善業は異熟を生むことはなくなったと言われています。

まとめると
  • 強い不善業が殺害業としてはたらいた場合、過去の善業のはたらきを抹殺する。
  • 強い善業が殺害業としてはたらいた場合、過去の不善業のはたらきを抹殺する。
という感じですね。