有分と死

臨終路は、五門路の場合、意門路の場合の2種類あります。これらの場合をもう少し詳しく見てみましょう。

五門路の場合

五門路とは眼・耳・鼻・舌・身門路のことです。臨終路が五門路になる場合、次の4つのパターンが考えられます。
  1. 速行 → 死心
  2. 速行・彼所縁 → 死心
  3. 速行・有分 → 死心
  4. 速行・彼所縁・有分 → 死心
これら4つのうち、臨終路が眼門路であり、1番のパターンの場合、臨終路は以下のようになります。
  • 有分
  • 過去有分
  • 有分動揺
  • 有分捨断
  • 五門引転
  • 眼識
  • 領受
  • 推度
  • 確定
  • 速行×5
  • 結生
  • 有分×15~16
  • 意門引転
  • 求有速×7
  • 有分
ここで、赤字部分は現在生、青字部分は次生を示しています。そして、このときの臨終路は眼門路であるという設定なので、このときの所縁は色所縁(業相)になります。

色所縁ということは17心刹の那寿命がありますから、現在生が終わってもまだ色所縁(業相)は滅さずに残っていることになります。

そこで、次生の結生が引き続き色所縁(業相)を所縁にとって、次生がすぐにスタートします。

結生が生じた後は、有分が15~16回生じ、その後、意門引転心を経て、その生で最初のの速行が生じます。その速行を求有速といいます。

求有速は、
  • 結生心に相応する心所(名)
  • 業生色(色)
を所縁として生じます。

ちなみに求有とは、有を求めると書きますが、有とは生存という意味であり、具体的には上にあげた「結生心に相応する心所+業生色」のことなのです。

つまり、求有とは生存を欲求する渇愛のことで、この渇愛があるため生命は自分のことを愛おしく感じるわけです。

意門路の場合

欲界から欲界に生まれる場合は五門路の場合と同じく次の4つのパターンがあり得ます。

というのも、欲界から欲界に生まれると言うことは、臨終路が意門路欲界速行時分であるわけで、そこには彼所縁が含まれる可能性があります。
  1. 速行 → 死心
  2. 速行・彼所縁 → 死心
  3. 速行・有分 → 死心
  4. 速行・彼所縁・有分 → 死心
また、欲界から大界(色界・無色界)、または大界から欲界に生まれる場合は次の2パターンがあり得ます。
  1. 速行 → 死心
  2. 速行・有分 → 死心
欲界から大界に生まれるとき、臨終路は意門安止速行時分であり、そこには彼所縁は生じません。また、彼所縁は欲界心のみに含まれるので、大界から欲界に生まれるさいに大界の臨終路に彼所縁が含まれることはないのです。